安倍政権末期には国民の間に「一票の行使」を望む声が強まっていたが、「いま、選挙があっても、あの野党じゃ」とすっかり関心を失っている。そのくらい野党のダメっぷりは際立っている。 野党は9月の自民党の首相交代をチャンスとみて立憲民主と国民民主が合流に動き、一応、民主党以来となる衆参150人という大勢力の新党が出現した。だが、合併交渉にあたった国民民主の玉木雄一郎・代表の一派が“オレ、一抜けた”と参加を拒否して逃げ出し、分裂グセは改まっていないことを露呈した。 新党の党名は「立憲民主党」。新代表には枝野幸男氏が選ばれると、何も変わってないじゃないかと支持率は7%と合流前(11%)より大きく下がった。 役員人事も旧民主党時代から同じ顔触ればかり。それもそのはずで、「党内には7つの派閥があって人事ではポスト争い。どうせ選挙互助会。総選挙に負けたらすぐバラバラになるのに」(所属議員)という声が中から聞こえてくる始末だ。 当の枝野代表は、「いよいよプレーボール。ここから本当の戦いがはじまる」と総選挙をにらんで候補者選びを急いでいるが、野球に例えるなら優勝候補の常勝球団・自民党に対し、二軍や戦力外通告された選手を寄せ集めた新球団が勝負を挑むようなものだろう。 しかも、指揮官はそのまま、試合(選挙)に勝つ気なし。だからアンチ自民党でさえも全く期待しない。
自民党の弱点
この立憲民主には、当選17回の小沢一郎氏と当選14回の中村喜四郎氏という保守系の長老たちが加わった。 自民党時代に最大派閥・経世会の中枢で政治を動かした2人は、平成の政治動乱の中で袂を分かち、「不倶戴天の政敵」として政争を繰り広げたが、令和の野党合流で奇しくも“兵卒”として同じ党になった。 そんな政界ドラマも今は昔、自民党から見るともはや“老兵”だろう。ただし、弱小野党にとって2人の加入は“劇薬”そのものだ。田中角栄元首相に選挙術を叩き込まれた2人には、「選挙に滅法強い」という共通点がある。 小選挙区制度の生みの親でもある小沢氏は、全国289の選挙区ごとに、どんな企業や人物が票を動かせるかといった事情を知り尽くし、その剛腕で自民党の支持基盤を組織ごと寝返らせるという離れ業を何度も成功させた。 一方の喜四郎氏は、ゼネコン汚職(※注)で実刑となり、再起後は無所属で出馬しながら自民党候補に7連勝、「無敗の男」の異名を持つ。 【※注/1993年に発覚したゼネコン絡みの政財癒着の汚職事件。当時建設相だった中村喜四郎氏は斡旋収賄容疑で逮捕され、懲役1年6か月の実刑判決を受けた】 しかも、誰もが次の選挙は自民勝利を疑わない中で、この2人は違う読みだ。 「野党が1つになり、これが効果的に機能すれば絶対に政権を取れる。この1年以内に必ず政権を取る」 小沢氏が講演でそう言えば、喜四郎氏は前回総選挙の各党の得票を分析した上で、「次の総選挙では小選挙区で100議席をとり、比例区も合わせて200議席台にのせれば、過半数が見えてくる」と具体的な数字をあげている。他の議員には見えない自民党の弱点がはっきり見えているようなのだ。政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。 「昔の自民党議員は“どぶ板”と呼ばれる地元でのミニ集会や企業回りなどで後援会組織を固めていたから選挙に強かった。だが、現在の自民党中堅・若手の多くは、安倍政権の高支持率の追い風で楽に当選し、“どぶ板”を踏んでおらず、後援会が弱い。小沢氏と中村氏には、そうした自民党の弱点がよく見えているはずで、“これならひっくり返せる”という自信があるのでしょう」 連戦連敗の弱小球団に加入した“老コーチ”が、実は、敵の目も味方の目も欺き、短期間で弱小球団の選手たちを優勝候補に勝たせる番狂わせで一花咲かせようとしているのである。 ※週刊ポスト2020年10月16・23日号
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October 05, 2020 at 09:05AM
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立憲民主 小沢一郎、中村喜四郎の保守長老合流で大化けも(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース
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