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Thursday, June 11, 2020

CoreとAtomを両搭載するIntelの新CPU「Lakefield」正式発表(Impress Watch) - Yahoo!ニュース

 Intelが開発コードネームLakefield(レイクフィールド)を「Intel Core processors with Intel Hybrid Technology」(以下Lakefield)として発表した。 【この記事に関する別の画像を見る】  Lakefieldは、Intelが2018年の12月に公表した3Dダイスタッキング技術「Foveros 3D packaging technology」(以下Foveros)を利用して、22nmで製造されるPCH機能を実現するベースダイ、10nmで製造されるCPU/GPU/メモリコントローラを搭載したコンピュートダイが上下方向の3Dに搭載されており、さらにはPOP(Package On Package)でダイの上に最大8GBのDRAMが搭載されるかたちになり、これらを厚さ1mmのダイを12×12mmの実装面積に詰め込んでいる。  Lakefieldのメリットはそうした実装面積の小ささにより、よりコンパクトな基板を作れることで、超小型PCやタブレットなどにも、x86プロセッサを利用した製品を製造することが可能になる。また、スタンバイ時の低消費電力も大きな特徴で、2.5mWと桁違いに少なく、第8世代Core Yシリーズに比較してスタンバイ電力が91%削減されている。  これにより、LTEモデムを内蔵して、Windows 10のモダンスタンバイを組み合わせることで、ArmベースのSoCに匹敵するような低消費電力でスリムなx86ベースのモバイル機器をOEMメーカーが製造可能になる。  Lakefieldを搭載したPCは、すでにMicrosoftが「Surface Neo」として昨年(2019年)10月にニューヨークで行なった記者会見で発表しているほか、Lenovoからは「ThinkPad X1 Fold」がCESでアナウンスされ今年後半に投入される計画、また、Samsung Electronicsは「Galaxy Book S」をすでに韓国で発表しており、6月からいくつかの市場で発売開始される予定だ。 ■Intel版Big.LITTLEとなる1つのSunny Coveコアと4つのTremontコアを搭載したLakefield  LakefieldはIntelが2018年の12月に開催した「Intel Architecture Day」で発表されたもの。3Dダイスタッキング技術「Foveros 3D packaging technology」(以下Foveros)を利用して、22nmと10nmという2つのダイを3D方向(上下方向)にダイスタッキングした製品となる。22nmの製造プロセスルール(P1222)で製造されるベースダイには、PCH(Platform Controller Hub)の機能になるPCI Express Gen 3、USB 3.1コントローラ、I3C/I2C/SPI/SDIOなどのペリフェラル向けのコントローラなどが搭載されており、パッケージ内部の一番最下層に実装される。  なお、最新のCoreプロセッサではWi-Fi 6のMACをPCHに内蔵しており、CNViでWi-FiのRFだけを接続することができるが、LakefieldのPCHにはそうした機能はないので、Wi-FiはPCI Express/USB接続のIntel Wi-Fi 6 AX200やIntel Wireless-AC 9260などを別途M.2やオンボード搭載する必要がある。また、セルラーモデムの機能も内蔵されていないため、やはり別途Intel XMM-7560などのLTE-Aモデムなどを実装する必要がある。  そのベースダイの上に重ねて実装されるのが、P1274で知られるIntelの10nmで製造されるコンピュートダイ。コンピュートダイには、CPU、GPU、そしてメモリコントローラが搭載されている。CPUには同じく10nmで製造される第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake)に搭載されているSunny CoveコアのCPUがシングルコアで搭載されているほか、従来のAtomプロセッサの延長線上にあるTremontコアが4つ搭載されている。  この構造は、Arm系のプロセッサで採用されているbig.LITTLEに似た構造になっており、LakefieldではCPUとOSのスケジューラとが協調して、スレッドを大型ダイになるSunny Coveコアに割り当てたり、小型ダイになるTremontコアに割り当てながら効率を重視して実行される。  Tremontコアは昨年の11月にIntelが発表した新しいAtom系のコアで、Bay Trailなどの22nmで製造されるAtom以降のコアと同じようにアウトオブオーダーで実行するかたちになっているほか、分岐予測時の性能が引き上げられている。現代のCPUのようにAESやSHAの暗号化エンジン、32KB(データ)/32KB(命令)のL1キャッシュ、最大4.5MBのL2キャッシュなどの実装がされており、処理能力が従来のAtom系に比べて大幅に引き上げられている。  GPUに関してはIce Lakeと同じくGen 11の名前で知られるIntelの統合型GPUが搭載されており、最大で64EUの構成が可能になっている。Ice LakeのGen 11 GPUはIntel Iris Plus Graphicsのブランド名がつけられているが、このLakefieldのGen 11 GPUはIntel UHD Graphicsのブランド名になっている。最大クロック周波数が0.5GHzと、Ice Lakeの1.1GHzなどに比べて低く抑えられていることなどを考慮してブランド名はIrisにされなかったのだと考えられる。  ディスプレイ出力は最大で4つ(内蔵2つと外付け2つ)で、4K/60pの外付けディスプレイを2枚接続することができる。メディア周りのハードウェアデコーダ/エンコーダは、デコーダが最大で4K/60p 10bit 4:4:4のHEVCないしは4K/60pの8bit/10bit 4:2:0/4:4:4のVP9、エンコーダは4K/60p 8bit/10bit 4:4:4 HEVC/VP9となる。  また、さらにその上には、LPDDR4XのDRAMがPOP(Package On Package)のかたちで最上層に実装される。LakefieldではLPDDR4X-4267が搭載されており、最大で8GBのメモリが64bit幅で実装可能だ。  今回Intelが発表したSKUは2つで、Core i5-16G7、Core i3-13G4の2製品で、スペックは以下のとおりだ。 【10時訂正】記事初出時、従来のAtomがインオーダー実行という表現をしておりましたが、正しくはBay Trail世代からアウトオブオーダー実行です。また、表内のスレッド数に誤りがございました。お詫びして訂正します。 ■スタンバイ消費電力が2.5mWへ  こうした特徴を備えるLakefieldだが、とくに注目すべきはスタンバイ電力の削減だ。Intelの発表によればLakefieldのスタンバイ時の消費電力はわずかに2.5mWだという。これは、第8世代Core Yシリーズ(Amber Lake)のCore i7-8500Y(2コア/4スレッド、ベース1.5GHz/ターボ時4.2GHz、TDP5W)とCore i5-16G7を比較すると、実に91%のスタンバイ電力の削減が実現されているという。逆算するとCore i7-8500Yのスタンバイ時の消費電力は27.8mWとなるので、1桁もスタンバイ時の消費電力が減ったことになる。  スタンバイ時の消費電力というのは、いわゆるWindows 10のモダンスタンバイで、S0iXなどと呼ばれるステートに入っているときの消費電力で、スマートフォンの待ち受けと同じ状況にあるときの消費電力だ。このスタンバイ消費電力が大きいと、OSが待機モードにある時でも電力を消費し続けることになる。現実世界でのデバイスは、スタンバイの状態にあることが多いので、このときの消費電力が大きいと、ユーザーは「何だかよくわからないけどバッテリが持たないな」と感じることになる。  Intelはこのスタンバイ時の消費電力を、S0ixを初めて導入した第4世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Haswell)で大きく減少させた。それでも、Arm系のSoC(例えばQualcommのSnapdragonシリーズなど)と比較して1桁、2桁大きいと言われており、バッテリの減りが速いとユーザーが感じる最大の要因になっていた。  それでも年々Intelはこのスタンバイ時消費電力を減らしており、前述の通り第8世代Coreプロセッサでは数十ミリWまで削減されていた。それが今回数ミリWレンジまで下がることになるので、Arm系のSoCに追いついた、そういうことが言えるだろう。  このため、Lakefieldを搭載したデバイスでは、スタンバイ時でもバッテリがすぐに減ってしまうという事態は従来よりも大幅に減る可能性がある。このことは、最近じわじわと採用例が増えている、QualcommのPC向けのSoC(Snapdragon 8cxやMicrosoft SQ1など)への対抗策として大きな意味を持つものになる。 ■基板上の実装面積が大幅に削減  Lakefieldのもう1つのメリットは、基板上の実装面積の削減だ。従来の第8世代Coreプロセッサ Yシリーズでは、CPUパッケージはFCBGA1515で知られる1,515ピンのパッケージで、底面積は20×16.5mm(330平方mm)となっていた。これに対してLakefieldでは12×12mm(144平方mm)になっており、ラフにいって実装面積は半分以下(Intelの表現では56%削減)になっている。  さらに、忘れてはいけないのは、LakefieldではDRAMはPOPでパッケージ内部に3Dスタッキング搭載されており、DRAMの実装面積も必要なくなった点。つまり実際の削減率ではもっと大きいということだ。  Intelが昨年HotChipsで行なったLakefieldに関する講演のプレゼンテーション資料によれば、第8世代Coreプロセッサで基板を設計した場合、基板サイズは30×232mmとなるが、Lakefieldのそれはデュアルディスプレイデバイスで30×132mmと大幅に削減できるとしている。これは、Lakefieldでは電源回路モジュールも単体VRを利用したような回路ではなく、PMIC(1チップや2チップなどで電源回路が実現できる電源制御ICのこと)で構成できるので、スマートフォンと同じようなコンパクトな電源回路に出来ることも影響している(LakefieldのPMICはWarren CoveとCastro Coverという2チップ構成)。  その結果コンパクトなデバイスが実現できる。すでにOEMメーカーはLakefieldを採用した製品を公開しており、そのトップを切って発表されたのが昨年の10月にニューヨークで行なわれたイベントで公開されたSurface Neoだ。  Surface Neoは、デュアルディスプレイに最適化されたWindows 10Xと呼ばれる新しいUIに対応したデバイスとなる。Surface Duoのような機器が実現できたのも、Lakefieldが持つ統合が高まったことによる実装面積の小ささや、スタンバイ消費電力の少なさが影響していると考えることができる。  ただし、Windows 10Xのデュアルディスプレイ機能などの開発が当初の計画より遅れて2021年からになることで、当初の予定だった2020年のホリデーシーズンからの投入は延期され、2021年投入に変更されている(別記事参照)。  同じことは、OEMメーカーが計画しているマシンにも言える。LenovoがCESで発表したThinkPad X1 FoldもLakefieldを搭載しており、2つのディスプレイでタッチ操作して利用することができる。こちらは当初から通常のWindows 10で投入され、Windows 10X対応はその後という計画だったため、予定通り2020年中に投入される計画だ。  このほかにも、Samsung ElectronicsのSamsung Galaxy Book Sをすでに発表しており、今月中には韓国などの市場で出荷する見通しだ。  このように、Lakefieldの投入で、モバイルデバイスを巡る市場には若干の変化が出てくるだろう。とくに、影響を受けるのはQualcommが取り組んでいる、WoA(Windows on Arm)製品である可能性が高い。  Qualcommは昨年10月にニューヨークで行なわれたSurfaceの発表会においてMicrosoftがSurface Pro Xを発表するという大きなデザインウインを獲得している。現状でSnapdragon側のメリットは、低いスタンバイ消費電力によるオールデーバッテリとLTEモデムが標準搭載という2つだが、スタンバイ消費電力が削減されたLakefieldの登場でそのうち1つが減ることになる。  Lakefieldのメリットは、そのままSnapdragon側のデメリットであるx64のアプリケーションが動かず、Arm64ネイティブなアプリケーションがまだ少ないということの裏返しで、x64のアプリケーションが、ネイティブで動くことだ。かつてSnapdragon 850を搭載していたSamsung Galaxy Book Sが、LakefieldにSoCを変更したことは示唆的と言える。そのx64のアプリが動いて欲しいというユーザーニーズをSamsungが認識しているからこうした選択をしたことは容易に想像できる。MicrosoftがSurface Pro Xの後継SoCをどちらにするのかなども含めて、今後も要注目と言えるだろう。

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