東京五輪代表が、新たな勢力の勢いにのみ込まれた。

男子シングルス決勝で張本智和(16=木下グループ)が宇田幸矢(18=エリートアカデミー)に3-4で敗戦。女子シングルス準決勝では、女子と混合の両ダブルスも含め史上初の3年連続3冠を目指していた伊藤美誠(19=スターツ)が早田ひな(19=日本生命)に3-4で敗れた。早田は決勝でも同代表の石川佳純(26=全農)を下し、伊藤と組んだ女子ダブルスと合わせ2冠達成。男子の宇田とともに、シングルスでは初の全日本制覇となった。

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「世代交代がここ1、2年で進んでいる」と男子日本代表の倉嶋洋介監督は話した。宇田、戸上らがシニアの大会に出て頭角を現し始めた。ともに両ハンドから強烈なドライブを繰り出す本格派。24年パリ五輪では張本に加えて、代表候補となるのは間違いない。東京五輪のリザーブ(控え)の1人に「入る可能性はある」と同監督。男子シングルスは張本も含め4強は3人が10代。卓球界のポスト東京五輪は明るい。

早田は昨年4強の全日本から大きく成長した。同じ19歳の伊藤、平野と比べ、シングルスが弱いとされてきたが、その弱点を克服しつつある。女子代表の馬場美香監督は「過去でベストのパフォーマンスだった。これまで思い切りはいいが、入るか入らないか分からないボールも強打で打っていた。今回は当たり前のように入っていると感じた」と絶賛した。

167センチと長身で手足が長い早田は、パワーのあるドライブが得意。打ち気になりがちだが、その気持ちをコントロールし、五輪代表2人をねじ伏せた。早田自身も「狙う」と公言しているが、こちらも東京五輪のリザーブに入る可能性がある。10代の若手にとって「リザーブ→パリ」の五輪ルートが理想的な経験の積み方となる。

一方、東京五輪代表6人は、伊藤の女子ダブルスと混合ダブルスのタイトル2つだけ。昨年末までワールドツアーを転戦し、五輪代表争いにしのぎを削り、体も精神面もボロボロになるまで戦った。その直後に開催された全日本。他の選手に比べ、準備不足になるのは仕方ない側面もあった。【三須一紀】