縦長へと回帰したキドニー・グリル
新型4シリーズの巨大化したキドニーグリルをみて、BMW AGに在籍する日本人デザイナーの永島譲二氏の言葉を思い出した。実は以前、永島氏にキドニー・グリルのないBMWは考えられないのか尋ねてみたことがある。 「まず大前提としてBMWに見えなければいけない。説得力のある代わりになるものができるのであればもちろん歓迎します」と穏やかな口調で答えてくれた。もちろんそういった模索は過去に幾度も行われてきたという。その言葉はすなわち、キドニーの代替となるものを見つけることは至難の業であることを意味しているように思えた。 キドニー・グリルを初めて採用したモデルは1933年に登場した、BMWとして初のオリジナル4輪車「303」だ。当時、グリルといえば縦に大きな1枚ものが一般的だったが、他車との差別化を図るために2分割したことが始まりだったという。ちなみにキドニーは英語で腎臓の意味だ。 基本的に縦長のデザインで変遷をたどっていたキドニー・グリルが、もっとも小さく、限りなく四角に近づいたのが1978年に誕生した、初のMモデル「M1」だった。ジウジアーロがデザインを手がけただけあって、キドニー・グリルがなければ、BMWというよりはイタリアンスーパーカーのようだった。ここでもキドニー・グリルの重要性を再認識したはずだ。 初めて横長のデザインを採用したのが、1986年にデビューした2世代目E32型7シリーズだった。これをきっかけにキドニー・グリルは横長のデザインが定着する。巨大化のきっかけは2015年にデビューした第6世代のG11型7シリーズだ。大型化はデザインのためのみならず、エンジンやブレーキの冷却のために空気を取り入れる必要がない時には、電動でグリルを閉じて空気抵抗を低減する“アクティブ・エア・ストリーム”という機能を盛り込むためでもあった。 そして2020年、誕生から約90年を経てキドニー・グリルはふたたび縦長へと回帰した。この大型縦長キドニー・グリルは2019年のフランクフルトモーターショーで披露された4シリーズのコンセプトモデル「コンセプト4」で提示されていたもので、それが市販モデルにもそのまま採用されたというわけだ。 前置きが長くなってしまったけれども、こうした背景を知れば新しい4シリーズの顔つきにも少しは合点がいくだろう。
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