西前頭4枚目の正代(しょうだい、28=時津風)が、大関貴景勝(23=千賀ノ浦)を突き落としで破った。1敗を守り、自己最速となる9日目での勝ち越し。優勝争いのトップに、徳勝龍と並んでいる。

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正代は喜びを隠しきれなかった。貴景勝に勝つと、土俵上で軽く2、3度、跳びはねた。懸賞の束を初めて両手で受け取り、笑みを浮かべながら西の花道を小走りで引き揚げた。右手でガッツポーズをつくり、付け人と喜びを分かち合った。「勝ち越して、大関に勝ったので、だいぶ興奮しました」と振り返った。

立ち合いで当たり勝ち、押し込んだことが勝因だった。突き返されたが、余裕をもって右に動き、相手を突き落とした。「大関戦なので、思い切りいけました。タイミングもすごく良かったと思います」。

受け取った懸賞は38本(手取り114万円)。支度部屋に戻っても、束の封を解くことはせず「場所が終わってから開けます。楽しみに取っておきたい人です」と喜びをかみしめた。

帰路は多くの観客に囲まれ、「正代頑張ってよ! 優勝、優勝」の声が飛んだ。周囲のムードは高まりつつある。時津風部屋の枝川親方(元幕内蒼樹山)は取組前に、正代の好調の要因についてこう言っていた。「正代が正体を現した。わはは。ウチの部屋からもしかして…、というのを期待している。そうなったら、前の枝川親方(元大関北葉山)以来なんだよな…」。

そんな期待をよそに、本人は足元を見つめている。NHKのインタビュールームで、今後への「欲」について聞かれると「まだ出てこないです。一番一番集中して取れたらいいです」。残り6日間、楽しみが広がっている。【佐々木一郎】