豊かな表現力で幅広い役を演じる女優・森川葵。もう一つの顔が、「ワイルド・スピード森川」だ。日本テレビ系の深夜バラエティー番組「それって！？実際どうなの課」で、アーチェリー、テーブルクロス引き、ビリヤードなどの初めて経験する種目に挑み、驚異的なスピードで難題をクリアしてきた。そして、ついに今月、世界へ羽ばたいた。日本代表として「スポーツスタッキング」という競技の国際大会に出場し、金、銀、銅メダルを獲得したのだ。「どうしてそんなにすごいのか」を本人に直撃した。（文化部 若林圭輔）
「これまで生きてきた中で一番頑張った！ 毎日毎日練習を積み重ねたという意味では、一番記憶に残る挑戦でした」。快挙の軌跡を特集する特番（２８日午後７時、一部地域除く）の収録直後、満足そうな表情で振り返った。
森川は隠し芸的なスゴ技に挑戦する企画で番組に出演しており、これまで４０種目近くに取り組んできた。数個のサイコロをカップの中で振り、遠心力で何段にも積み上げる「ダイススタッキング」をはじめ、世界の達人たちが長年かけて習得した技を、たった１日で成功させる事態が続き、「バラエティー番組の速度違反」として、「ワイルド・スピード森川」の異名が広まった。
今回挑んだ「スポーツスタッキング」は、カップをピラミッドのように積み上げ、再び元に戻すという、コンマ数秒のスピードを競う競技。森川は国内の記録会でいきなり日本記録を出して日本代表入りし、今月１７～１９日に韓国で開催されたアジア大会では、各国の強豪がひしめく中、初出場でいきなり個人で銅、ペアで銀、団体タイムリレー部門で金メダルを獲得した。
「実は本気でやることはできないと、１度断ったんです」。どの種目も楽しそうに取り組んでいるように見えるが、今回は、かなりの葛藤があったことを打ち明けた。
スポーツスタッキングは過去の放送でも取り組み、「ワイルド・スピードぶり」を発揮していたが、国際大会ともなると、相当の練習時間が必要になる。「その場で習い、その場で結果を出す」という企画の趣旨と異なる上、ドラマの撮影などで多忙を極める状態で臨むと、長年練習を重ねているほかの選手たちに失礼になると思ったからだ。
「プレッシャーがかなり大きく、（制作の中京テレビなどの）スタッフと一緒に（成功を）積み重ねてきたものが壊れるかも知れないと断りました。それでも『どんな結果であれ、必ずいい番組にする』と強く説得され、信じることにしました」と振り返る。
習いごとや大会出場の経験がなく、この番組に出るまで「やってみたら何でもできる」という自身の特異な才能に気付いていなかったという森川。「知らなかった自分を見つけてくれた」上、いつも成功するまで粘り強く撮影に付き合ってくれるスタッフへの信頼が背中を押した。
それからは、日本代表の瀬尾剛さんの指導を受けながら、どんなに忙しくても毎日カップを手に取り、「早く練習したい。ちょっとでも触っていないと不安」と思うまで練習を重ね、好結果につなげた。
「日の丸を背負うって、どんな気持ちでいればいいのか分からなかったけど、ほかの代表メンバーとみんな一緒に頑張ろうと思い臨みました。瀬尾さんがいたからこそ取れたメダル。今後の人生で必ず、『あの時頑張った』と記憶に残ると思います」
ほかの種目も含め、神業の極意を尋ねると、「分からないです。でも集中力とプライドかなと思います」と意外な答えが。「例えば動体視力とか、空間認識能力とか」と水を向けると、「メンタルの問題です。やれるまで諦めたくない。あくまで根性です」と言い切った。
ただ、コツをつかむ瞬間はあるそうで、「やっている時は無心ですが、何か手になじんだという感覚があるんです。『あ、いける』、みたいな。必ず毎回あります。“調整が整っていく”感じです」と独自の表現で教えてくれた。
この番組で森川を知った視聴者が、森川の出演するドラマを見るようになるなど、女優業にも良い影響が出ているそうだ。「感情的な芝居の時にふと何かを触ってみるなど、手や指の動きを細かく突き詰めるようになり、感触の繊細さを生かすようにしています」とも。
「世界にチャレンジしてきたので、一緒に集中して見てほしい。テレビの前で声を出して応援してくれたらうれしいです」
ところで、隠し芸の巨匠・堺正章の後継者との声も聞かれるが、と問うと、「堺さんの素晴らしさ、天才っぷりがあるので、私がその後継者だって言われるのは本当におこがましいし、畏れ多いです」と強く首を振った。（写真はいずれも中京テレビ提供）
からの記事と詳細 ( “ワイルド・スピード”森川葵、スゴ技でついにアジア制覇 ... - 読売新聞オンライン )
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