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Saturday, October 23, 2021

【朝晴れエッセー】魚焼きグリル・10月24日 - 産経ニュース

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義父が亡くなり半年が過ぎ、にわかに決まった主(あるじ)不在の家の撤去に向けて準備が進んだ。

古書買取、古美術商、リサイクル業者…。「何でも引き取ります」のうたい文句とは違い、作業は予想以上の膨大な家財との闘いだった。その中でほっこりできたのは写真の整理。

神職の職を93歳まで務めた義父の正式な装束姿は凛々(りり)しくも美しい。近郷近在の数多くの社を守り祭りつつ、誰もが知る神社の神主も務め上げた。写真の数も半端ない量だ。

「ねぇこの男前は義父さん?」「母さんは男前の父さんにぞっこんやったらしいなぁ…」。スラリと長身の背広姿、ポケットに片手を入れて立つ姿は本当に格好いい。

若い頃の2人の姿に片付けの手が止まった。片付けも一段落、帰り際に台所の隅の魚焼きグリルに気づく。

「これ結構新しい家電やけど…汚れひどいな」「持って帰って磨くわ」。独り暮らしもまめに家事のできる人だった。

魚が好物で、お供えのおさがりで頂いた魚。釣り好きの娘婿が持参する魚。義父はうれしそうに手際よく焼いて食べていた。

独り暮らしの義父を支えてくれた数々の家電たち。台所でこの魚焼きグリルの前に立ち、菜箸を片手に魚の焼き上がるのをじっと見守る義父の姿が昨日のことのように想像できる。

義父さん、頑張って生きてくださってありがとう。義父さんの生き方は私たちの誇りです。今夜は秋刀魚(さんま)を焼いて義父さんをしのびます。

大槻高子 65 神戸市東灘区

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