コロナ禍で外食を控えるようになったので、家での食事を充実させている人が増えている。しかし焼き肉だけは、別。煙が発生したり油がはねたりするので、「やりたいけれど、できない」といった悩みを抱えている人もいるはずである。
このような問題を解決するために、山善は2020年7月に「減煙焼き肉グリル YGMA-X100」(以下、XGRILL)を発売した。価格は同社が運営する「くらしのeショップ」で4980円。
XGRILLは同社のホットプレートと比較して煙の発生を約70%、油はねを約85%低減。終わったあとの部屋の掃除の手間を大幅に軽減できるようにした。油汚れも手入れがしやすいように、本体、プレート、水トレイの各部が分離でき、メンテナンス性が良いのも特徴だ。
企画されたのは19年秋のこと。背景にあったのは、小さな子どもがいると焼き肉店には一緒に行きづらいことがあった。家庭機器事業部 第1商品統括部 商品企画1部 MDの近藤富昭氏は次のように話す。
「私には小さな子どもが2人いることから、焼き肉に限らず外食そのものがしづらいんですよね。焼き肉は好きなものの、煙や油はねから家の中でやるのは敬遠していたのですが、家の中でできたら……という思いから、焼き肉が家の中で楽しめる家電製品を企画しました」
煙の発生や油はねを抑えるグリルにはこれまで、内蔵のファンで煙を吸引するタイプや上からヒーターで焼くタイプなどがあったが、前者は高価、後者は火力が弱い、といったデメリットがあった。そこで、これらとは別の方式を模索することにした。
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ホットプレートより煙の発生、油はねが少ない上に、おいしく焼ける
近藤氏は中国の協力工場に相談。企画のコンセプトや実現したいことなどを伝えたところ、現在のXGRILLに採用されている構造が提案される。
構造の特徴は、まず火力が弱くならないように、ヒーターと網状のプレートを一体化。プレート裏面にヒーターを直付けし、熱を伝わりやすくした。また、網の表面を曲線形状、裏面を立体的なX形状とした。曲線形状とすることで油が下に流れやすくなり、流れた油は立体的なX形状によって一点に効率よく集まり、水を張ったトレイにしたたり落ちるようにした。
「プレート表面のカット構造を工夫しているグリルは以前からありましたが、XGRILLは裏面をX形状にカットしていて、油がさらにしたたり落ちやすいものになっていたので、私の中では『これはイケる!』という手ごたえがありました」と近藤氏。20年4月末、自社のホットプレートと中国から届いたXGRILLの最初のサンプルで肉を焼き比較検証したところ、煙の発生量、油のはね具合ともに、満足のいくレベルに抑えられたことが確認できた。
また近藤氏は、煙の発生、油はねが予想以上に抑制されたことに加え、格段においしく焼けたことに驚いたという。平面のホットプレートで肉を焼くと油がたまって、焼くというより揚げる感じになってくるが、XGRILLで肉を焼くと余分な油が落ち、焼き上がりが柔らかくなったためであった。
比較検証はこの1回のみ。開発はさぞ順調に進んだかのように思われるが、中国の協力工場では3カ月ほど、何度もサンプルをつくることに。より多くの油がしたたり落ちるように、X形状の角度を繰り返し見直すなど、山善が求めるクオリティーのものができるまで試作開発を続けた。
XGRILLは当初、5月には発売する予定だった。「ゴールデンウィークあたりになると、スーパーでは焼き肉に関する販促を始める傾向にあるので、本当はこれに間に合わせるつもりでした」と振り返る近藤氏。開発が難航したことと、新型コロナウイルスの感染拡大によってサンプルをマメにチェックできなかったことなどにより、発売がやや遅れることになった。
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売れる自信があったので販促物を製作
近藤氏はXGRILLについて、「年間2〜3万台程度売れるのではと予想していました。私の中では5万台売れれば大ヒットです」と話すが、21年5月末までに売れたのは約7万台売。このままのペースでいけば、発売から1年間で10万台に達する見込みだという。
売れる自信があったので、発売にあたってメディア向けにプレススリリースを発信。煙の発生と油はねがどの程度抑制できるのかを数字で示したことから各メディアで注目され、多くの人に知られることとなった。
店頭でも目立つ工夫をした。まず、ディスプレー用の什器を製作。売れる自信があったので、製作を会社にかけあったという。什器にはQRコードを印刷し、スマートフォンで読み取ると商品のサイトにアクセスできるようにした。
このほかにも、商品の特徴などをまとめた動画も制作。店舗内で流してもらうなどした。
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「野菜を炒めたい」という声から生まれた「XGRILL +PLUS」
ただ、発売からしばらくたつと、ユーザーから「野菜を炒めたい」「食べ盛りの子どもがいると小さい」「平面プレートと交換できないか」といった声が聞かれるようになった。こうした声を受けて20年10月、網状のプレートと平面のマルチプレートを一体化した「減煙焼き肉グリル YGMB-X120」(以下、XGRILL +PLUS)を企画し、21年4月に発売した。価格は「くらしのeショップ」で8000円。
交換用の平面プレートを用意するのではなく網状のプレートとマルチプレートを一体化したのは、交換用の平面プレートだと網状のプレートと同じくヒーターと一体化した構造を採用しなければならず、コストがかかる上に重くなって使い勝手が落ちるため。そのため、全体的に大きくし網状のプレートとマルチプレートを一体化する形をとった。マルチプレートは野菜を炒めたりすることのほか、チーズを溶かしてチーズフォンデュやチーズタッカルビをつくるのにも使うことができる。
開発はXGRILLで採用した網状プレート表面の曲線形状、裏面のX形状を受け継ぎつつプレートサイズを拡大。XGRILLのプレートは幅300×奥行200(単位ミリ。以下同)だが、XGRILL +PLUSは幅383×奥行232であり、そのうちマルチプレートは幅80×奥行232となっている。
XGRILL +PLUSはこのほかにも、XGRILLから変更した点が2つある。1つが、網状プレートの淵に傾斜をつけ、油がたまらないようにしたこと。XGRILLはプレートの淵が平面で油がたまりやすくなっていたことを受け改良した。
もう1つが、網のすき間。XGRILLは幅8ミリだったが、5ミリにしている。すき間を狭くしたことで、小さな肉片が下に落ちにくくなっている。
これら2つの変更により、XGRILL +PLUSは煙の低減率が約80%に向上する。すき間の幅が狭くなって数が増えたことに伴い、余分な油がより効率的に落ちるようなったためだ。油はねの低減率についてはXGRILLと同等で、約83%となっている。
「XGRILL」のプレートの淵(左)と「XGRILL +PLUS」のプレートの淵の比較。平らな「XGRILL」と異なり「XGRILL +PLUS」はゆるく傾斜しており、網のすき間から下に油が落ちやすくなっている平面プレートとの比較検証は1回で済んだが、プレートのデザインについてはマルチプレートの使い勝手がよくなかったことが理由で、発売直前まで手直しが入った。「サンプルは四方の縁の立ち上がりが低く、野菜などを炒めるとこぼれることがありました」と近藤氏。当初の立ち上がりは高さ6ミリほどだったが、現在は12ミリ。バターを溶かすような使い方をしてもこぼれる心配がなくなった。
XGRILL +PLUSの売れ行きは、今のところ好調。価格がXGRILLよりアップしているが、初速はXGRILLと同じだという。XGRILLより使い方の幅が広がって、より便利になったことが好調さにつながっているようだ。
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第3弾の発売も検討中
XGRILL、XGRILL +PLUSを購入したユーザーの反応としては、煙や油はねの少なさを評価する声が多い。ユーザーの中には「今まで使ったもの(グリル)の中でこれが一番いい」とべた褒めする量販店のバイヤーもいるほどだという。
その一方で、手入れがしにくいという声もあった。プレートがヒーターと一体なことから、同社では最初、プレートの水洗いは推奨していなかった。しかし、油汚れを落とすのに水洗いできないのは不便なことから、安全に水洗いできるかどうかを検証。試験の結果、差し込み式コントローラーの接続部をしっかり乾かせば大丈夫との結論に至り、21年から取扱説明書を「水洗い可」と変更した。
販売好調を受けて、第3弾も検討中。シリーズ化を進めて、XGRILLブランドを育成していく考えだ。
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